占い師の恋【完】
つくづく、私は馬鹿だと思う。知らなくてもいいのに知ろうとして、どんどん深みへとはまって行くのだ。
『まあ、薄々気づいてるとは思うよ。』
「そう…ですか。」
…ハッキリと知れば、青は傷つくんだろうか。
兄弟なのに、知らないって変だよ。
そりゃ、人様の家庭事情は知らないけどさ。きっと悲しいよ、自分だけ知らない感覚は。
少しでも知っていたときのショックと全く知らなかったときのショックの大きさは半端じゃないと思う。
そりゃあ、薄々気づいてるなら知らないよりはいいだろうけど、やっぱり傷つくことは同じであって。
『じゃあ、俺はそれだけだから。また明日ね。』
返事をする気はなかった。ていうか、返せないでしょ。
ボタンを押す音と、連動して流れる定期的な機械音。
私も終話ボタンを押し、携帯を閉じた。
母親の病気を知っていて、死ぬのが分かっていた時の悲しみと
母親の病気を知らずに、急に会えなくなった時の悲しみと
どっちが悲しいんだ?
私はきっと前者だ。