【キセコン】お寒いのがお好き
「あら、時弥。おかえり」

「またたくましくなったな」

「そんなにすぐにたくましくなるワケ無いでしょ父さん」

 皆それぞれに彼に声をかける。

「ただいま」

 立ち上がった母親に土産を渡しながら発した。

「行くよ」

 まだ腰すら落としていない時弥に茜は立ち上がり荷物を半ば奪うようにして床に投げ置いた。

「……どこに」

「この大晦日にまだ開いてる店があるの。バーゲンしてるから付き合いなさい」

 茜はそのために昨年産まれたばかりの娘を夫と向こうの家族に預けたのだ。

 愛情が無い訳ではない。

 この時を逃さないために預けたのだが、ことのほか向こうの家族もそれを楽しみにしていた。

 こちらの実家よりご主人さんの実家の方が遠いためだろう。

 とにかく帰って早々に時弥は出かけるハメになった。
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