【キセコン】お寒いのがお好き
音もなく降りてくる白い妖精──空は鈍色だが、静まりかえった風景は切り取られた絵画のようで時弥は目を細めた。

 こんな年越しもいいかもしれない。窓ガラスから放たれる外の冷気が肌に伝わり、室内に目を向けた。

「そうだよな」

 俺はここにいる。

 ここがあったから、俺は今ここにいるんだよな。

「時弥。おせち食べたら出かけるよ」

「ええっ!?」

 茜の鬼のような言葉に時弥は今すぐ逃げ出したい衝動にかられた。



END

 next→あとがき
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