angel ring
だけど…

どんなに言ったって何も変わらない。

純が戻ってくる訳でもない…

どんなに話し合っても

解決策なんか何もないんだ…


私は優と総合病院に何度も足を運び、純を担当してくれた医師にその時の話しを聞いた。

先生は、快く私達に何度もわかりやすく説明してくれた。


【新生児仮死】

胎盤から十分に酸素が届かず、胎児が仮死状態で生まれてくる事。

<症状>
新生児は生まれた時に「オギャー」と大声で泣くが、仮死状態の新生児は呼吸が出来ない為、泣き声はなく、皮膚は紫色になり、体はグッタリとしている。



仮死状態の場合、生後すぐに蘇生処置がとられ。処置によって、すぐに自発的呼吸を始めれば後遺症の心配はない。

でも、仮死状態が長く続くと、脳や運動能力、発達に障害を残す事がある。

重度の場合は…

死亡する事もある…


純は長く仮死状態が続いて亡くなった…

もしもあの時、純の異変に気付いてあげられたら、すぐに病院に連れていってと言えたはず…

私は、家から1番近い産院を選んだ。

本当はもっとよく調べてから決めるべきだった。

後に知った事だが、そこの産院はあまり評判はよくなかったそうだ…


何かあった時の為に、すぐ対応できる総合病院。

もしも、ここで純を産んでいたら…

純は死ななくてもよかったのかもしれない…


私はものすごい後悔に押し潰されそうだった。





結局産院の医師が認めたのは、私達への説明不足と病院への搬送をもう少しはやくすればよかったという事。

泣き声については曲げる事なく「泣いた」と主張した。


結局この件については、和解金で終止符をつけるしかなかった。


お金なんかいらない…

お金じゃなくて純を返してよ…

生きている純をここに連れて来てよ…

お金なんかで買えないものを失ったんだ…

純の命は何にも変えられないんだから…

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