angel ring
私は外へ出る事が嫌いになった。

前は休みの度に優と出掛けていたけど

近くに出掛けると必ず知り合いに会ってしまうから…



今は誰にも会いたくなかった…



私は、相変わらず精神安定剤と眠剤、母乳を止める薬を飲み続けている。

今だに薬を飲まないと眠る事が出来なかった。

そして引きこもっている日々。



そんな私を優は、ある日外へ連れ出した。

近くではなく…

遠くに…

私が子供を失ったなんて誰も分からない所に…



「ねぇ…どこ行くの?」

「内緒」

そう言ってもう車を二時間以上も走らせている。

優がどこへ向かっているかさっぱりわからない。


私は窓の外を呆然と眺めていた。



窓の外はいつか見たような風景…

(あれ…?ここの風景見たことあるかも…)



そこは、前に優と遊びに行った時

遠出だった為そろそろ帰ろうとした時だった。

まだ帰りたくない私は、たまたま目にした水族館の看板を見て、優にそこに行きたいと言った。

その時通った道だった。


あの時私は、水族館へ向かう車の中で遊び疲れた子供のように眠ってしまった。


その様子を見て、優は水族館へは向かわず家に戻った事があった。

その後、目をさました私はすごく怒ったのを覚えている。


今思えば何であんなに怒ったんだろぅとおかしくなった。



「到着!」

優が車を駐車場にとめた。

「来たかったんだろ?前に玲すげぇ、怒ったもんなぁ」

優はいじわるに私の顔を覗き込む。

「もぉ〜、恥ずかしいから言わないでよ!」

「あははは、じゃ行こう」

そう言って優は手を差し出した。

手を繋いで歩くのって久しぶりでドキドキした。


中に入るとキレイな魚に少し気分が安らいでいくのがわかった。



その時


まだ歩き始めたばかりの一人の男の子が私の方によちよち歩いてきた。

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