angel ring
その子は、手を伸ばして真っすぐ私の方に近づいてきた。

(純も生きてればこうやって私の所にきてくれるんだろうな…)


私の中でまた暗い気持ちになっていくのがわかった。


その時だった。


ビタンッ……


「うえぇ〜ん…」


男の子が転んで泣き出してしまった。

それなのに私は…

男の子に優しい声を掛けてあげることもできず、ただ呆然と立ったまま動けずにいた。


「大丈夫か?痛かったな。もう平気だからな」

とっさに優がその子を抱き起こして頭を撫でた。

「すみませ〜ん!」

その子のお母さんが泣き声に気付き駆け寄ってきた。

「ほら、ママ来たよ」

そう言って優は男の子をお母さんの方に向かせてあげた。

その時の優の優しい顔…


私はその顔を見てはっとした。



私は周りの家族の幸せそうな顔を羨やんでばかりいた。

子供がいる事が本当に羨ましくて…


子供が欲しい…


人の子でもいいからとまで思った…


周りを見渡すと小さな子供ばかり…


純と同じ位の赤ちゃんもいた…


私だって本当は子供がいたのに…



とにかく子供を見るのが辛かった。


そして、私は考えてはいけない事を考えてしまった…

あの時死んじゃう運命なのが純じゃなかったら…

あぁなるのが、他の子だったら良かったのに…


その時の私は自分でも嫌になるような…醜い心を持った本当に嫌な人間だったと思う。

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