心獣
彼の名前は矢島潤といい、市内の芸術専門学校に通っている。自転車登校区域のギリギリ外に住んでいる為、徒歩で通っていた。
「まさか朝からベッドから落ちるなんて、ついてないな。」
「おはよう、潤君。朝っぱらから顔死んでんよ。」
潤は友人の美玲の声が聞こえた方向に振り返った。彼女の声は特徴的で、一度聞いたら誰しもが彼女の声を覚えてしまう。
潤は背中を掻きながら前に顔を戻した。美玲は少しふてくされ、走って潤の背中を鞄で叩いた。
『バッチーン』
朝の痛みと合わさり、激痛が背中に走った。潤は地面に倒れた。
「ちょっ…。」
美玲は慌ててしゃがみ込んだ。