《続》ポケット
「あ、お帰り。どこ行ってたの?」
遅かったね、と付けたしながら出迎えてくれるはる君。
「んー、ちょっとね」
と言いながら買ったばかりの水着が入っている袋を背中に隠す。
こんなの見られたら恥ずかし過ぎて、修学旅行行けなくなりそう。
「ふーん?」
と首を傾げながら、言うはる君に今からご飯作るねーなんて誤魔化すように言えば
「もう、作ってあるよ。」
さらっと言われて謝りながらリビングに向かう。
いただきます、といつも通り二人で食べて食器を洗い終えて、上に上がろうとすると、はる君に呼びとめられる。
「歩夢、何か俺に隠し事してる?」
重なり合う視線が、何故だか寂しい。
「な、なんもないよ」
と水着の事をどうにか隠そうと必死に言えば
「もういい」
と降ってきた意外な、冷たい一言。
だけど返す言葉も見付からずに、そのままじっとしていれば
「風呂行くから」
と先に背中を向けられる。
え、やだよ………
最後の修学旅行前にはる君と喧嘩だなんて。
そう思ったけれど、私は暫くその場から動けずに、気まずいまま時は流れて、あっという間に当日になってしまった。