《続》ポケット
お会計を済ませファミレスを出ると少しだけ冷たい風が吹いた。
……もうすぐ、冬が来る。
「…いいな、青春。」
千夏が目を伏せながら言った。
その横顔が、あまりにも切なそうで私も目をそらしてしまった。
「……そういう千夏は?」
ちょっとだけ間を置いて冷たい風に身震いをしながら、問う。
「あたしは……今のところ、ないかな。全くって言うわけじゃないけど、今は他でいっぱいいっぱい。
…あ、じゃあ。帰り病院寄るからここで。」
そういいながらぱっと手を挙げ、横に振った。
「…!」
一瞬で思わず、目を丸くしてしまう。
「腕…」
私が呟いた一言に千夏も気付いたらしい。
「真井さんだよね…?」
「ん、でも全然痛くないし」
千夏は笑顔でいいながら、白い腕には似合わない痣を、隠した。
…あれからやっぱり、そうなってしまったんだ。