《続》ポケット
「……あ、ゆむちゃん?」
予想もしていなかった声に驚いて、顔をあげれば輝くんがいた。
驚き過ぎて、声すら発せずにいると
「輝ー!
忘れ物してる。ちょっと待っ…」
と開いていたドアの奥にいた、はる君と目が合ってしまった。
………ドキン、と心臓が鳴った。
つい、あの日の出来事が一瞬で思い浮かんでしまって、頭の中で直ぐに消去する。
そのまま、お互いに目をそらせずにいた。
完全に、二人とも意識してて。
すると、
「陽斗、サンキューな。じゃ、また来る。」
突然、輝くんがそういってはる君の手から、忘れ物を受け取ると走って行ってしまった。
…すっかり忘れてた、輝くんがいた事。
「……歩夢?」
輝くんが去っていってしまったあと、はる君が首を傾げながら言った。
「…た、たただいまなさい」
意識し過ぎて、噛みまくりだし日本語がおかしい私。
「おかえり。…入るよね?」
はる君は当たり前のようにそういって奥の部屋に戻った。
ドキドキと鳴る心臓を一旦落ち着かせ、おじゃまします、と言い中に入った。