初恋向日葵

『あい』

先輩の口から発される女の子の名前にドクンと胸がなる。

「呼ばれましたけど」

声がかすれ語尾が小さくなる。

「花梨?」

先輩が心配したのか顔を覗き込む。

もう優しくしないでよ・・・

ちょうどその時、屋上へ入るドアの向こうから会話が聞こえた。

『好き』
『私も』

カップルの会話だろうか。笑い声も聞こえる。

なぜか私の中に『好き』という言葉が響いていた。

「呼ばれましたけど」

考えている間ずっと先輩に顔を覗き込まれていた。

だからちゃんと大きめの声で言った。

瞬間なんだか目頭が熱くなる。

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