RaisonDetre
le chevalier  ~騎士~
とりあえず居酒屋に入ったクラウドはビールを頼んだ。
袋の中にはそこそこの金が入っていたし、ここで飲んでも宿代は十分すぎるほどにあった。

「どー・・・いうことなんだろ。」

金の入った袋をポケットにしまうとちょうどビールが運ばれてきた。
一気に飲み干すと近くにいた中年のおじさんグループに声をかけた。

「おーい。そこのおっさん。ちょっといい?」
「んあ?なんだよ兄ちゃん一人か?寂しいなぁ。」
余計なお世話だ。むこうはもうだいぶ出来上がっている様子で顔が真っ赤になっている。

「うっせぇなぁ、それより聞きてぇことがあるんだけど。」
「なんだ?」
「セシル・オール・・・なんちゃら、あれなんだっけ。まぁとにかくそういう名前のヤツしらね?」
一瞬目を丸くした男はその後すぐにふきだして大笑いした。

「お前ッ・・・本当にしらねぇのか!?セシル・オールブライト!」
「あ?そんなに有名なやつなのか?」
「有名も何も次の騎士団長はセシル・オールブライトだーっつって賭けの倍率でもナンバーワンだぜ!」

無精ひげを撫でると男は得意げに言った。

「公爵家に金持ちで容姿端麗で剣術もずば抜けてる!姫様の婚約相手に申し分ないおとこだな!」
「何、この国の姫さん結婚すんの?」
「あぁ、今年の騎士団長相手にな。」
「あー姫さんも大変だなぁ。あんなやつと婚約なんて。」

俺は死んでもゴメンだな。

心のそこで呟く俺がいた。
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