《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
そう言って、先生は右手の
掌をそっとあたしの頭の
上に乗せた。



髪から肌へ、じんわりと
その温かさが伝わってくる。



落ち着くのと緊張するのと……
相反する不思議な感覚が、
あたしの体を支配する。



「たしかに過去に戻れたら
楽かもしれないな。

だけど、過ぎた時間は
取り戻せない。

――タイムマシンなんて、
この世にはないからね」



優しいけどキッパリとした
声で、先生はそう言い切った。



まるであたしの甘えた
考えを、スッパリ断ち切る
ように。


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