《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
     * * *



コンサートホールを出た
後も、あたしはまだ完全に
放心状態のままだった。



体中が音で満たされてて、
歩いたり口を開いたら、
ポロポロとこぼれるんじゃ
ないかって思う。



それくらい、あたしは今
聴いたばかりの素晴らしい
演奏に、身も心も持って
いかれそうなくらい、
感動してて――…。



「……おーい、如月?」



あたしを呼ぶ先生の声に
やっと気づいて顔をあげると、
先生は呆れ返った表情で
見下ろしてた。



……もしかして、ずっと
名前呼んでくれてた?


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