《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
ピアノの音がなければ、
きっとあたしっていう
人間は完成しないんだと思う。



「今のあたしは……
あそこの木みたいなもの
なんです。

暖かな春には――
幸せだった時には周りを
包んでくれてた葉っぱが、
全部なくなって。

今は真冬の冷たい風に何も
持たないでさらされて、
震えてる――…」



寒くて寒くて、凍えてた。

――本当は、ずっと。



「そうか………」



先生はあたしと一緒に
背の高い街路樹を見つめ
ながら、しんみりと呟く。


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