《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
そしてゆっくりと、こう尋ねた。



「ピアノをやめてしまった
のは……

君が抜け出せない、辛い
過去のせいなのかい?」



「…………はい」



短く答えたあたしの声に、
返ってくる言葉はない。



わずかな沈黙の後、あたしは
不安になって隣を見上げ
ようとした。



でも―――ひねろうとした
その首に、突然フワリと
何かが絡みつく。



「……………!?」



柔らかい、温かな感触。



先生がストールみたいに
衿元にあしらってたはずの
ダークブラウンのマフラーが、
あたしの肩にかかってた。


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