《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
だけど―――…。



「―――お母さん。

もう、今年でおしまいに
しようよ」



静かに向かいのソファに
腰をおろして、あたしは
ゆっくりとお母さんに告げた。



お母さんは何も言うこと
なく、ただ『?』という
目をあたしに向ける。



そう――こうやって呼べば、
見てくれる。



朝寝坊してれば起こしに
来てくれるし、三食の食事
だって、ちゃんと作ってくれる。



それでも5年前の今日から、
お母さんは本当の意味では
あたしを見てなかった。


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