《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
ぎくりと体を強張らせて、
言葉を失うあたし。



そうだ―――将輝には
言えない。昨日のことは。



「………たいした理由はないよ」



たっぷり数十秒は黙り込んだ後、
あたしはごまかすように
低い声で言った。



不自然もいいとこだけど、
いい言い訳が何も思い
つかなかったんだ。



「……はぁ?

なんだ? なんか今日の
お前、おかしくね?」



眉をひそめて声をあげる
将輝に、あたしはあしらう
ように『もういいよ』と告げる。


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