《完》天上のCANON 〜先生と奏でる、永遠のメロディ〜
だけど先生は笑いつつも
『こんにちわ』と言い
返してくれ、そして、



「そんな所に立ってないで、
もっとこっちへおいで」



ドアの所に突っ立ったまま
だったあたしに、中に
進んで椅子に座るよう
勧めてくれた。



「はい………」



くぐもった声で返事して、
並んだ生徒の席の一番前に
座るあたし。



先生は再び鍵盤に向き
合うと、また新たな曲を
弾き始める。



サティの“ジムノペディ”。



なんとなく悲現実的な
メロディーラインの、
どこか掴み所のない、
不思議な感じのする静かな曲だ。


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