【完】貴方が居たから。
「憂音のいも…」



「―――黙って寝とけよ」



ーードカッ

何かを言おうとした男に、倉木さんが頭突きを喰らわせた。



「いたた…紀斗に鍛えられたお陰で倒せちゃったよ」



昔は不良だったかと思ったけど、実際はそうでもなさそうだ。

“紀斗に鍛えられた”って、何かされたのだろうか。



「終わったで」



「…うん。ありがとう」



「憂愛に怪我がなかったらえぇから」



彼の優しさ。

彼が無傷だから。

理由がよくわからない涙が溢れた。

両方――…。

本当は、二つの理由に私はホッとして、涙を流してるんだ。
< 117 / 200 >

この作品をシェア

pagetop