【完】貴方が居たから。
「泣かんでえぇ。大丈夫やから」



「わかってるけど…っ」



ギュッと抱き締められて、更に泣けてしまう。

気を効かせてくれた倉木さんが、兄貴と共に去って行く。

私は自分からもキツく抱き着いた。



「憂愛?」



「ん…?」



「俺は守るべき者が出来て嬉しいんやで。せやから、憂愛は大いに守られとけ。憂音だってちゃんと助ける。俺にはわかるんや。大人に反抗したくなったり、全てをぶち壊したくなった理由が」



「ありがとう…。ありがとう、紀斗さん…」



出会いには意味がある。

きっと、私たち兄妹が貴方と出会ったのは、愛を知る為。

大人になる為だ―――……。
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