【完】貴方が居たから。
「1人に、して下さい。気分が優れなくて…」



倉木さんの横を抜けて、客室の一つに入る。

私と紀斗さんの部屋。

ベランダに出て、潮風を体で浴びる。

燦々と光を降らせる太陽。

―――もう、あの日々には帰りたくない。

兄貴に振り回された日。

父親のせいで、陽を浴びれなかった、質素な暮らしに戻るのも嫌だ。



「憂愛、ちょっと話さない?」



振り返れば小春。

ベランダにしゃがみ込んでた私の隣に座った小春は、「私さ…本当はここが嫌いなんだ」と漏らした。



「…え?」



「この海は、私の姉を殺したの」



…嘘、でしょ?

しかも小春は、弟と2姉弟だって…。
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