【完】貴方が居たから。
―――お昼を過ぎた頃、小春が起きて来た。
諏訪さんと揃って現れたけど、表情は疲れきってる。
「小春。ちょっと出掛けよ!」
「ごめん、私…」
「良いから!メイクもオシャレもしないで、このままの小春でお出掛け」
梢は渋る小春を連れて玄関に走る。
私たちも追い掛けるように家を出ると、眩しい光が出迎えてくれる。
「憂愛、行くで」
「うん…」
車に乗り込むと、車内では誰も口を開かない。
小春は針の痕が残る腕を擦ってる。
海と山が隣接していているこの街は、自分を見つめ返すチャンスをくれるだろう。