【完】貴方が居たから。
私の目の前を通り抜けた風。

それは紀斗さんが、男の人たちに向かって行った報せ。



「待って…」



私は彼の背中に抱き着いた。

確かに紀斗さんは強い。

勝てると思う。

しかし怒り任せで、腰で行かれたら。

怪我されたら嫌だ。



「行かないで…。お願いだから…」



怖いんだ。

怖いんだよ…。



「離すんや」



「…ヤダ…。いつもの紀斗さんが良いの…っ…」



何で涙が出るんだろう。

何を不安になってんの。



「憂愛…」



紀斗さんは私の腕を退かした。

夜風が私の腕の中に悲しく舞い込む。

話を聞くのが…怖い。
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