【完】貴方が居たから。
私はロビーにあったソファーに座り、国会中継をつまらなく思いながら見る事にした。

音声が小さくて、耳に届かない。

トントンと叩かれ、相手を見たけど知らない人で、何か話してたけど、聞き逃してしまった。



「あの…何て言いました?」



向き合うように立ち、聞き返す。

紀斗さんより年下だろう。



「だから!“君、ハンカチ落とさなかった?”って訊いたんだよッ!!」



ただ聞き返しただけなのに怒鳴られ、体がビクッと反応した。

悪気もなかったのに――…。

ハンカチも、私のモノではない。

水色だけど、ブランドのロゴを見る限り、男物。
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