【完】貴方が居たから。
我が家に父親はいない。

借金と引き換えに雲隠れ。

行方は知れてないし、捜すつもりもない。

母方の祖父が酒造の親方で、お金があって不自由はしてないし、父親はもういらない。

―――携帯のリダイアルから、従兄の神楽竜哉ーカグラタツヤーの名前を引き出す。

引き取りは親族だが、私は未成年な為、竜哉兄も来て貰わないといけない。

昨日も呼び出してしまったのに、申し訳なさを感じながらダイヤルボタンを押した。



『…はい?』



「憂愛。兄貴がまた捕まったみたい」



『はぁ?また?俺、残業で2時間は無理だぞ…』



昨日も残業中に来てくれたんだ。

仕事、溜まってるよね。
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