音友~オンガクトモダチ~

引越し

ジリジリジリジリ
朝。起きて最初に聞こえた音。
「優~!早く起きなさい!!」
二つ目の音。これは、ママの声。
目を開けると、いつもの地味でモダンな部屋
そこに目立っている、ギターを持った私の写真
「いつもの朝だぁぁ!!つか、3月だぁぁ!」
私は大声でさけぶ。
窓を見ると、桜の木の枝に小鳥が二匹並んでとまっている。
そこで、私はいつものように伸びをする。
「も~!優!!うるさいわよ!起きたんだったら、早くご飯
食べなさい!!」
「は~い」
鏡の前で、服や髪の毛を整える
春になりかけの良く晴れた朝。
いつものようにママに叱らせて、いつものように学校
に行って・・・それが私の毎日だった。

その日の夜。
寝ようとしても、寝られない夜。
「はぁ。何で眠れないんだろ・・・」
時計を見たら、もう夜中の3時。
お茶を飲みにベッドから降りて、階段を下りて。
リビングに続くドアを開けようとした瞬間
私は、ママとパパがまだ起きていることに気づいた。
「なぁ、俺。仕事の都合で、大阪に転勤することになった。」
えぇ!?私はつい声が出そうになったけど、何とかこらえた。
「そんな・・・!」
ママはすごく驚いていた。
私は、これ以上聞いていると、ドアを開けてリビングにでちゃいそう
だったので、ベッドにもどった。
でも、その日はベッドで一睡も眠れなかった。
次の朝。
「今日は土曜日だぁ!」といつもは叫んでいたのに、なぜか
叫べないでいた。
みんなで、朝ご飯を食べている時はママとパパ、
作り笑顔をしていて、弟がビックリしていた。
ママ・・・パパ・・・
食べ終わって、ママが食器洗い機にお皿を入れようとした時、
つい手が滑ってお皿を割ってしまった。
・・・?ママがお皿を割ったの、何年ぶりだろ?
「ぁ・・・。つい手が滑っちゃったわ。」
「大丈夫?」
私は、割ってしまったお皿を拾いながら言った。
「う、うん。・・・後で話があるの。寝室に来て。」
「あ、うん。」
ママは、それだけを言って無言でお皿を拾っていた。
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