音友~オンガクトモダチ~
私は、お皿を拾った後、2階の寝室に行ってテレビを見ていた。
テレビをつけて、チャンネルを8に変える。
いつも見ているお笑い番組。
弟の達也といっしょに大爆笑している私。
でも今は、本当は笑えるのに、笑えない自分がいた。
コンコン!
ドアノック。いつもはしないのに・・・
「優!入るわね。」
「うん。」
部屋にちょこんとおいてある2つのイスに、
向かい合わせで座った。
それから、1分間無言で何も話さなかった。
ようやく、ママの口が開いた。
「・・・ねぇ。優。よく聞いてね。」
「あ、うん。」
「あのね、実は・・・」
ママが話しかけたのに、私が口を挟んでしまった。
「知ってるよ!!」
「ぇ?」
「私、知ってるの。パパの転勤で東京に引っ越さなきゃ
いけないこと!!」
私は、大声で言った。この声、達也に聞こえているかもしれない。
「いつ引っ越すの!?」
ママは私がこのこと知ってるのに、ビックリしていた。
「・・・さっ、3月25日。」
やっぱり
「友達にも!そう言っておいてね。」
私はなぜか半泣きになって、ドアをおもいっきり閉めてやった。
―でも、ママもパパも悪くないんだよね―
心の中で、そう思う
月曜日
友達に引越しのことを伝える。
20日にお別れ会しよーね!
んで、いっしょにおもいっきり泣こうね!!
そう約束した。

春休み!
いよいよ、引っ越しまで、後1週間!!
パパはできた家を、楽しそうにしていて、
ママと私は引っ越しの準備で大忙し!
そして、達也は・・・
「ねぇねぇ、みんな何してるの?」
達也は私の服を引っ張りながら、そう言ってくる。
もぉ!かわいいんだからっ!!
「ん?何してるって!?もう、達也は2階に上がっといてね。」
「ぅん。」
そう。あのかわいい、かわいい達也には、
引っ越す事も何も言えなかった。
言っても、5歳だからまだわからないでしょ!
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