新聞部部員AとBの事情。
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「実はお姫様の出席日数がそろそろヤバいんだ。」
保健室からの帰り道、利郎は前を向いたままみくにつげる。
「成績の方は申し分ないんだけど、出席日数はどうしようもないからね。」
ホントに世話が焼ける。
部長も、緋芽先輩も、本当に。緋芽先輩は理事長の姪だし、初めはあまり気にしていなかったが、これだけ事態が長引けば、権力も効果が薄れる。
ホントに、煩わしい限りだ。
しかし、今回はどうするべきか…
利郎は静かにため息をついた。
みくは利郎の横顔をちらりと盗み見て、相変わらずポーカーフェイスの水島先輩は何を考えてるのかよく分からないと思った。
分からない、分からないけど…
「水島先輩は優しいですね!」
うん、なんだかんだ言って、みんなの事心配している。
みくはニコーッと笑った。
「………。」
そんなニコニコしているみくを見たことのない虫に遭遇してしまったように見つめ、怪訝な顔で利郎は珍しく言葉を失う。
みくは応答のない利郎に一瞬ハテナが頭の上に浮かんだか、まぁしかし固まっている先輩は案外貴重だなとしばらく見つめ返していた。
タタタタタタ…
利郎は急に歩くスピードをあげたかと思ったら、無表情ですごいことを口にする。
「柚木と緋芽先輩でドロドロの愛憎劇を繰り広げたら良いと思うよ。」
「え!ひどっ!酷くないですかそれ!!」
みくは利郎の後を駆け足で追った。