新聞部部員AとBの事情。
部室にはほとんど利郎しか来ない。
いや、正確には利郎しか留まっていない。
彼らは面白そうな事を見つけると足を動かせずには居られないからだ。
ようは新聞部は集合場所であり溜まり場であり帰宅場所であり彼らの巣なのだ。
巣のお守りはだいたい利郎。好き好んで何故そのポジションに甘んじているのか自分でもよく解らない。
あえて言うなら嘘みたいに馬鹿で子供な彼らが好きだからだ。(でも馬鹿な行動を一緒になってするのは何かやだ。)
という訳で、彼女が毎日毎日、足繁く通っても部室には利郎しかいない訳で。
かといって何をするでもない訳で。
利郎は利郎で今まで自分一人で気ままに過ごして来た空間にロリコン要素は要らない訳で。
彼女は当たり前のように目の前の椅子に腰を下ろし、人が読書にふけようがお構いなしに(身長のせいだろうが)上目使いで話かけてくる訳で。
--…あぁ、面倒くさい。
「柚木は好きな奴とかいるの?」
こんな場面は淀野に比べれば少ないが何度か経験している。
つかず離れずの彼女達に与える甘いチャンスの罠。
溶けるような眼差しで囁けば、彼女達は頬を染めながら意を決して利郎に告げる。
“……私の好きな人は、水島くん…だよ。”