新聞部部員AとBの事情。
部長が下から手を伸ばし、緋芽先輩の涙を優しく拭う。
緋芽先輩もその手に全てを預けてまた一筋涙を流した。
「…良かったっすね、部長。」
鈴木が小声で呟く。
その隣で山本が静かに頷いた。
完全に二人の世界に入っている先輩達にふぅやれやれと息を吐き、利郎はふと隣を見つめる。
「!」
利郎は思わずギョッとした。
柚木が、泣いていたのだ。
「……。」
「…あ、え?…あは、なんだろ……、やだなぁ私ったら、感動しちゃったのかな…はは」
そう言いながらも柚木の瞳からポロポロと涙がこぼれてくる。
利郎は、ああもう、と思った。
ああ、もう。
世話がやける。
「フベッ!」
柚木は急に左側から伸びてきた腕に顔をゴシゴシと擦られ、潰れた動物みたいな声を出した。
するとガシッと腕を掴まれ、水島に引っ張られるまま扉に向かう。
「お取り込み中の所すみません。頭部が流血し出したんで保健室に行ってきます。」
淡々と喋りながら血まみれの手のひらを高くあげ、水島はぺこっと先輩達におじぎをする。
「うわ!トリィそれヤバいじゃん!」
今まで空気に飲まれて沈黙していた輩がザワザワ騒ぎ出した。
水島が血まみれの手のひらを分かりやすく高くあげたので、みんなそちらに目が行き、誰もみくの泥だらけな顔を見ていない。
「柚木、一緒に来て手当てして。じゃ、失礼します。」
ガラガラガラン。