。+風溶。+【短編】
いつもの帰り道。
友達と駅で別れて我が家へと向かう。
あいつのことを考えながら。
実は私は先週からあいつに告白をしようと作戦を練っていた。
友達に背中を押されて頑張ろうと意気込んでいたのに
ちょうど告白をしようとした日から
あいつは学校をさぼりだした。
「あーぁ、あいつに今日も会えなかったなぁ…」
「あいつって誰?!」
突然後ろから飛んできた声に驚いて
一度心臓が大きくうねって
うわぁ?!っと思わず声をあげてしまった。
バクバクとハイスピードで脈打つ心臓を深呼吸でなだめながら
後ろを振り向く。
「…」
誰もいない…。
「ここ!」
上からあいつの声がする。
え?
あいつの?
上から?
勢い良く顔を上げると愛しいあいつが浮いていた。
「裕也君…。と言うかなんで浮いてんの?!」
夢だろうか。
右ほっぺを出来るかぎりのばしたりあまりの痛さに顔をしかめてしまうほどつねっても私の世界は変わらない。
いきなりダッシュして壁に激突しても、痛い。
現実なのか…。
「長谷川さん何してるの?」
「えっ夢かと思って。それより裕也君こそ何してるの?」
愛しい人は地面に軽やかに降りて頭をかいた。
「俺今植物状態みたいなんだよね。起きたら俺がベッドに眠ってて俺が浮いてて。皆俺のことに気付かなかったけど、長谷川さんは気付いてくれた。さっすがー」
この時はさっすがーの意味なんて知らなくてただただあいつのことを心配した。