。+風溶。+【短編】
お風呂からあがってさっぱりした私。
ここで裕也君もどうぞとかは禁句だろうか。
お風呂入れるのかな?
と言うか
触れるのかしら?
「長谷川さん」
不覚にもギクッとした。
「はい?」
裏返る声。
「名前で呼んでいい?」
さっきはギクッとした心臓が
ドクッと波打った。
忙しい心臓だなぁ。
「もちろんいいよ」
赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて
濡れた髪で隠しながら
あいつに言った。
また笑ってくれるかな?
そう思ってあいつを見たら
あいつは自分の手を見てた。
「俺、詩織に触れるかな?」
「…。」
触れるかな?
私もそう思ってたから
そっと手を差し延べた。
大好きな人の手。
初めて握る男子の手。