。+風溶。+【短編】




悩んで悩んで、
頭を抱えていると、急に視界が真っ暗になった。



今度こそ逝くのか…?



何もかも感じなくなって無感覚になったのもつかの間、
ふと気が付くと、いつもの帰り道の駅前に俺はいた。









俺何してんの?









すると、ちょうど俺の横に、俺の気も知らないでひょうひょうと建っているビルの壁があった。



ぶつかってみたらどうなるだろう?

もし夢だったら、痛くない。

もし現実だったら…

壁にぶつかれるのか?


もし通り抜けてしまったら
俺は…











「今日もあいつに会えなかったなぁ」







この声は…







浮いていたから気付かなかったけれど
ちょうど俺の前にはクラスメイトがいた。



あいつに会えなかった?
好きな奴でもいるのか?!
だったらショックすぎる…



「あいつって…誰?」



恐る恐る聞いてみる俺の声は妙に響いた。



驚いたらしく、華奢な肩を上げて、目を大きく開けたまま振り向く彼女は
やっぱり可愛い。



なんで浮いてるの?
とかなんとか聞かれたけれど
俺だってさっぱり分からない。



けれど適当なことを言った。



いや、適当とはいえ正答と言える部分があったかも知れない。



だって今の俺は幽体離脱かも知れないじゃないか。



でも俺は感じていた。



気付いていた。



これは現実だと。






まぁそれは仕方ないとして
なんで俺はここに?



こいつとしゃべっていると緊張するんだよなぁ。



好きなのか?
と思ってしまうほどに。






ふと気が付くと、道行く人がこっちを訝し気に見ている。



そっか…
俺の姿はこいつ以外には見えないんだっけ…



俺にペラペラ話す可愛い奴の口の前に人差し指を立てて黙らせると、
彼女も自分が周りにどうな風に見られているのか気付いたらしい。



そんなこんなで好きかもしれない女子の家に招待されてしまった。













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