。+風溶。+【短編】




部屋のドアを開けると、ふわっと良い香りが俺たちの元にやって来た。



香りと言う空気が気団となってドアからこぼれだしたようだった。



やっべぇ…

緊張する



無意識の内に俺は空中で正座をしていた。



好きな奴の部屋はこんなに緊張するものなのか…



え?



好き?







ふと気が付くと
可愛い奴は少しうなだれたようにまたいつものごとくぼんやりしていた。



いつもこうなんだよな。



教室でも、見る度ボーッとしている。



そして
奴はよほど不安なのか心配なのか、小さな指を少し震わせて俺に問いを投げた。



「どこの病院にいるの?」




俺?



いないよ




でも、なんだかそれは言えなくてごまかした。



いや、ごまかしじゃない。



俺は今ここにいるから。



そっと彼女の隣に身を寄せた。



彼女をもっと近くに感じたくて。



好きな子の隣はほわっとしてて居心地が良くて思わずニヤけてしまった。



そしたら
彼女もつられて声を合わせるように笑っていた。













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