黒い夢 白い月
あっ、居た。
横断歩道の向こう側。
一人で右腕に付けた時計と睨めっこしている彼。
『気付いてよ』って気持ちいっぱいに念じてみる。
すると念が通じたのか、彼が私に気付いた。
お互い大きく手を振り、笑顔を交わす。
赤信号を待つ時間がもどかしくて仕方がない。
その間も、お互い目を逸らす事もなく見つめ合ったまま。
信号が青へと変わり、私は彼の下(もと)へと走り出した。
彼も私に向かって歩き出す。
その瞬間――――…