黒い夢 白い月
しばらく進んで行き、やがて広い草原に着いた。
その中央に彼の姿があった。
私の胸まである草を掻き分け、彼に近付いて行く。
…夢じゃない。
…やっと会えた。
………やっと…
少し開けた所に、こちらに背を向ける彼の姿に緊張が走る。
一歩…一歩…踏み締めて近付く。
私の気配を感じたのか、ゆっくりと振り向いた彼。
……は、泣いていた。
月明かりに反射し、キラキラと輝いて見えるその涙を止めてあげたくて…
そっと頬を包み、親指の腹で涙を拭い取ろうと触れた時だった。
先程まで、見ていた夢と同じ映像が頭を巡る。