黒い夢 白い月
折り鶴
ハッとして目を瞬(しばた)かすと、草原の景色が広がっていた。
あれは……
悲しい夢なんかじゃない。
あの事故は、
あの事故は………
私の記憶だったんだ。
全てを思い出した頃。
目の前の彼が、姿を変えていく。
それはやがて真っ白な鶴となり、暗闇に浮かぶ白い月に向かって羽ばたいていく。
「待って!」
私の声も届かないのか、鶴は最後、月の光となり消えた。
それと同時に、ビューっと強い風が吹いた。