黒い夢 白い月
「必ず…待ってる」
風に混じり、愛しい彼の声がした気がした。
手にしていた折り鶴が、風でカサカサと音を立てている。
もう片方の手でつまみ上げ月に翳(かざ)すと、文字が微かに透けている。
破れない様にそっと折り鶴を広げてみると…
《必ず…待ってる》
彼の字で丁寧に書かれていた。
急いで部屋に戻ると、引き出しの中の折り鶴を全て広げていった。
《守れなくてごめん》
《早く戻って来いよ》
《アカリの声が聴きたい》
《いつも側に居る》
《愛してる》
どれも一言だけだったけれど、彼の想いが詰まっていていた。
広げた鶴を胸に抱き締め、床に泣き崩れた。