王様と庶民~九条家長女のお話~
奴はこう言った
嘘くさい笑顔、と
――初めて“本郷雪斗”を否定された気がした
笑顔が素敵ですよ、と
――初めて“俺”が認められた気がした
私と友達になって下さい!、と
――可笑しな奴だと思った
私は家だとかそんなのどうでもいいんです。“雪斗”先輩と友達になりたいんです。、と
――ああ、こいつは本当に
一緒にお弁当食べたり、くだらない事で笑いあったり、そんな普通の事をしたいんですよ。、と
――救いようのない、馬鹿なのだと思った
こいつは、こいつなら、俺の事を、ただ普通の人間として扱ってくれるんじゃないかって
こいつなら、九条瞳なら、
信じてみても
いいんじゃないかって
―――そう思った俺が一番馬鹿なのかもしれないな
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