王様と庶民~九条家長女のお話~


奴はこう言った



嘘くさい笑顔、と
――初めて“本郷雪斗”を否定された気がした


笑顔が素敵ですよ、と
――初めて“俺”が認められた気がした


私と友達になって下さい!、と
――可笑しな奴だと思った


私は家だとかそんなのどうでもいいんです。“雪斗”先輩と友達になりたいんです。、と
――ああ、こいつは本当に


一緒にお弁当食べたり、くだらない事で笑いあったり、そんな普通の事をしたいんですよ。、と
――救いようのない、馬鹿なのだと思った


こいつは、こいつなら、俺の事を、ただ普通の人間として扱ってくれるんじゃないかって




こいつなら、九条瞳なら、

信じてみても


いいんじゃないかって



―――そう思った俺が一番馬鹿なのかもしれないな


.
< 19 / 56 >

この作品をシェア

pagetop