王様と庶民~九条家長女のお話~
“お前の家に行ってもいいか?”
そう言葉に出たのは無意識だった
貧乏なのに、
いつも楽しそうで、幸せそうで、
俺には無いものばかり持ってる瞳
…だから惹かれたのかもな
だから羨ましいのかもな
そんな瞳が育った温かい場所に、
無償に行きたくなった。。。
「…いいんですか?!本当にいいんですか?!」
「くどいぞ」
「……家には連絡したんですよね?」
「…ああ」
その日に瞳の家に行くことになった
家には、知らせていない
生徒会で遅くなる
家にはそう連絡を入れた
今は裏口から歩いて瞳の家に向かっている
……学校と家以外で外を歩くのは久しぶりだ
通過する軽自動車に自転車、
帰宅中の学生
時折民家からの話し声……
ああ、ここは何て温かい場所なんだろう
.