王様と庶民~九条家長女のお話~


本郷は冷たい。


会話どころか

物音でさえしない




「瞳姉!!」

「!睦、今帰り?」

「うん!!……あれ、瞳姉のお友だち?」



赤いランドセルを背負って、瞳に抱きつく少女


“睦”ってことは六番目の兄弟……


「あ、先輩、この子が家の三女の睦です!
睦、ご挨拶は?」

「初めまして!九条睦です!!姉がいつもお世話になってます」

「あぁ、…本郷雪斗だ。」


瞳に似て明るい笑顔

二人が笑顔で話をしているのを見ると、

とても眩しく感じる



「?行こう!雪兄!!」

「ちょっ、睦、引っ張っちゃ駄目だよ!!」

「えへへ~」


ぐい と手を引かれて、小走りになる



いつも冷たく俺を照らす夕陽が、

今日はなぜか暖かいと感じたんだ




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