王様と庶民~九条家長女のお話~


「うちのがすまないな」

「いえ、別に…」

てかむしろこっちが謝んなきゃじゃないのかな
たぶん橘さん?は、私が庶民だから彼を呼び止めようとしたんだよね


「それが、自転車とやらなんだろう?」

「へ?あ、これ?そうだよ」

さして珍しい色でも形でもない普通の、
普通の(ここ大事なとこ!)ママチャリを、
彼は興味深そうに眺める


「家に自転車ないの?」

「危険だから、と触らせてもくれない」

「そっか…」

華園に通う子はほとんどがいい家の子息令嬢
身体にかすり傷1つつけたくないんだろう

「乗らせてあげたいけど、この自転車じゃ君には大きいし……。
!そうだ。今度うちに来る?君と同じぐらいの弟がいるからちょうどいいサイズの自転車があるよ」

「!!本当か」

「坊っちゃま!それはなりませんぞ!!この橘、その事だけは許しません」

「うるさい!」

「坊っちゃま」

「僕はっ、普通の子供がしてる当たり前のことを当たり前にしたいんだ」

「!」


…そっか

この子もただの小学生と同じなんだ


.
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