恋のレッスン〜先生は幼なじみ〜
いつも元気で、笑顔が絶えなかった大輔のお母さんが、私は大好きだった。


遺影を見ていると、“ミイちゃん”と私を呼ぶ優しい声が、今にも聞こえて来そうな気がした。


お腹の中にガンが見つかった時は、既に末期だったらしい。

本当に、あっという間の事だった。


大輔やおじさんを遺して逝ってしまうのは、どんなにか無念だっただろう。


お葬式の時、堪え切れずに涙をポロポロ流していた大輔を思い出したら、涙が止めどなく溢れてしまった。


「ほら、これ使えよ」


大輔が白いタオルを貸してくれて、私はそれで涙を拭いた。

日向の匂いがした。


「ありがとな」


と言いながら、大輔は私の頭を2〜3度撫でて、部屋を出て行った。

その声が震えていたように思ったのは、たぶん気のせいではないと思う。


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