君がいるということ。


「え?」

「まあ竹中君はどうだか知らんけど、少なくとも詩花は野犬に懐かれたぐらいにしか思ってないね」

 碧はババ臭い手の動きを添えて笑った。

 あやなの顔は赤かった膝よりも真っ赤だ。

「そっか……ありがと」

 あやなはその一言で会話を終わらせるはずだったが、この二人にとっては無論、そうはいかない。

「まてまてまてまて」

 立ち上がろうとしたあやなの、今度は肩をおさえる。

「情報提供したんだから、竹中君とあやなの話をしてけよ」

「うっそ!?」

「おめーうちらが何も聞かずに行かせるほどいい奴だと思ったか?」

「……いや?」

「じゃー話は早いじゃねーか」

 あやなはやられた……と口をつぐみ、下を向いて、しかたないなぁと言わんばかりに、小さな口調で話し始めた。

「なにが聞きたいの?」

「好きになったキッカケ」

「うー……」

 目をつむって、そのキッカケを考える。

 いっそのこと作り話でもしてしまおうかと思ったが、今更引き返せないし、何よりあやなのプライドがそれを許さない。


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