君がいるということ。


 碧にとって高校は制服や少し周囲の髪の色が変わっただけで、中学校となんら変わりの無いものだった。

 携帯が使えるようになっただけ。お菓子が食べれるようになっただけ。ちょっと派手になっただけ。

 変わったことをあげればキリがないはずなのだが、目の前のいつもの友達と話している分、視界が狭くなっていたのかもしれない。

 しかし突然、背後から、「すいません」と言う声が聞こえ、優は目が覚めたように振り向いた。

 そこには、まだ中身が未知の詩花がいた。

 優は詩花に見とれていたことを、詩花が首を傾げるまで自分でも気づかなかった。

 二次元のメイドをそのまま三次元にしたような顔つきに、小さな身長。おまけに愛らしい声付きだ。

 碧は目を見開きながら、「はい?」と一応と言うように返事をした。

「中に入れないんっすけど……」

 詩花は碧を不審に感じながら、教室を指差す。

 気づけば碧たちの集団は、教室に入る後ろのドアを占領しており、前は……と思いきや、そこは男子が占領していた。

 いくら何でも初対面の女子と男子がいて、男子に突撃する女子はいないだろう。


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