君がいるということ。
臣は口をとがらせながら、ドアまで歩き、鍵を差し入れた。
詩花は躊躇いながら、おずおずとついていき、普通の家より一回り大きいドアが開くのを気まずそうに見つめた。
例の二人がついてきている気配が背中に伝わり、詩花は肩を強ばらせながら、臣に「ねえ」と仕方なく声をかける。
「ん? あ、締め出しだの怒ってる?」
「いや……紹介とか無いの?」
「紹介?」
首を傾げて何のことか考えている姿に詩花が苛立ちを感じていると、後ろから、「臣」と声がした。
「俺たちにこの子を、この子に俺たちを紹介しろってこと」
湖が臣の鈍さに呆れながら、詩花の頭に手を乗せた。
詩花は途端にビクッと心臓が跳ね上がるのがわかったが、バレることが悔しいので隠すように体を固める。
「湖。初対面の子にそれはタブーだよ」
詩花の様子を察したのか、絵が湖の手首を取った。
軽くなった頭に、詩花は気持ち力が弱まる。
「あー。その紹介ね」
ほかにどの紹介があるのかはわからないが、臣はドアにかけた手を一端離し、詩花の肩を持って回れ右させた。