君がいるということ。
靴の温もりが消え、冷たいフローリングが詩花の足の熱を奪う。
やっとたどり着いた自分の部屋のドアを閉めると、今までが全て夢で起こった物のように、虚ろにしか胸に残らない。
六畳の部屋に、まるではじっこを取り合いしたかのように、パソコンデスク、勉強机、本棚、タンス、テレビ、ベッドと並んでいる。
そのお陰で部屋の中央は見捨てられてしまった土地のように、栄えていない。
部屋に入ってすぐ右の出窓には、写真立てが学校の机のように並んでいる。
それに変わり、ドアの向かいの窓は、隣の家と窓の位置が同じなため、一年中閉め切っている。
むしろ作らなくても良かったほどだ。
その窓の下をわりと大きめの電子ピアノが陣取っている。
勉強机は、勉強しないと言う頑固な意志が表れているかのように散らかり放題。
本棚は下半分が扉付きで上半分の右側は手前の棚が動くようになっている。
無駄に奥行きがあるそこには、あらゆるマンガが上半分の左側に並びその右側に堅苦しく小説が並べられている。
下半分の雑誌や昔の教科書を入れるはずの扉は、いつの間にかいらないプリントの宝庫になっていた。