君がいるということ。


 授業中の騒がしさとはまた違うざわめきが、廊下を伝って全校舎に響き渡る。

 詩花は時計を見ながら、あと何時間で昼休みかを数えた。

「あと二時間かよ。待てねー」

 詩花の呟きに、優が「何々?」と寄ってきた。

「まじ授業うぜーよなー。腹減ってやる気なくすわー」

「おめーは満腹だと寝てばーっかじゃねーか」

 カーテンの隙間から穏やかな光が流れ込み、詩花の机の一部にスポットを当てる。

 詩花は鬱陶しいように、カーテンをきつく閉めた。

 木の温もりさえも無くなった机に書かれた棒人間の落書きが、愉快に踊っている。

 あまりにも滑稽なその姿に詩花は髪の毛を乱暴に書き足した。

「ぶっ! おめーセンス良すぎだし!」

 それを見て、碧と優が吹き出す。

「やっぱウケをとるなら、言葉より書く方がいーよなー……」

 詩花は最後の方は聞こえないほど小さく言い、その間に、昨日のことを思い出した。

“へー。あんたは言えないからこんな風に詩を書くわけ?“

 あのときとは打って変わって、青白く光輝く空が、カーテンに抑えられながら、詩花の髪に艶を出す。


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