君がいるということ。


 皮肉に笑いながら、臣は詩花の元へとゆっくり歩いて行く。

「はっ!? おま……いつから……」

「さあね」

 そう言いながら、臣は昨日と同じ席に当たり前のように座った。

 詩花は気が気ではない。

「何で来んだよ」

 極力臣と目を合わせないように心がける。

 臣はそんな詩花と閉じられているノートを見比べながら言った。

「俺が大事なアフタースクールのパートナーをほっとくでも?」

「は? パートナー? 誰が」

「そりゃあ口悪さんに決まってんじゃんよー」

「口悪さん? だから誰だっつーの」

「詩花に決まってんじゃん」

「な……」

 見ないと決めていたはずの臣の目を、詩花は罠にでもかけられたように見つめてしまった。

「いきなり呼び捨てにすんなよ」

 意志を全て断ち切るように、詩花は不自然に視線を落とした。

「失礼失礼。んで、俺、詩花に頼みがあんだけど」

「だから呼び捨てにすんなって」

「頼みがあるんだって」

「聞いちゃいねー……」

 ムキになることに疲れ、窓の外に目を移す。

「詩花。ノートみせて」

「あ?」

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